再生医療 医療美容ならではの安心・安全

幹細胞とは

本来、真の幹細胞と言えるものは、全能性幹細胞(Totipotent Stem Cell)と言って受精卵や初期の桑実胚と言ってその一つの細胞が全身の全ての組織を作り1つの命として形成することができる細胞を言います。定義としては、幹細胞は、自分自身のコピーを作ると同時に、必要に応じてさまざまな細胞へと変化することのできる細胞を言いますが、この機能を人工的に作製し、同じ全能性幹細胞と同じ機能を有した細胞がES細胞とiPS細胞です。これらを多能性幹細胞(Pluripotent Stem Cell)と呼びますが、ES細胞は受精卵を壊して作製されるために、倫理的な問題があり、世界的にその利用は規制されています。その倫理的問題を解決したiPS細胞が我が国の山中伸弥教授のグループにより発表され、幹細胞研究は飛躍的に進歩したと言えますが、このiPS細胞は、具体的には受精卵ではなく、皮膚組織から(今や血液から)多能性幹細胞を作製されます。これは素晴らしい発見で、2012年にノーベル生理学医学賞を受賞するに至りました。現時点ではこのiPS細胞はまだ民間での使用はできませんので、現時点で民間の治療に利用できる幹細胞は、上の表でいう組織幹細胞(Multipotent Stem Cell)と言われる幹細胞です。特に骨髄、臍帯血、脂肪組織、歯髄などの中には「間葉系幹細胞」と呼ばれる幹細胞が存在し、医療への応用で注目されています。iPS細胞が発見されるまでは幹細胞研究の主流であった脂肪幹細胞はこの組織幹細胞の代表でした。

これら幹細胞は、体の中で損傷した部分を補修し、新しい細胞を増やす「種」になることのできる細胞です。前述した有名なiPS細胞やES細胞も、同じ「種」としての力を持っています。この力から、再生医療は将来的に失った臓器、組織を修復することができるのではないかという期待が持たれているのです。

このような特徴を持つ幹細胞の中でも、脂肪組織の中に存在する幹細胞は組織採取が比較的容易で、含まれる幹細胞の量も多いことから、医療への応用の期待は大きいものがあります。しかし、幹細胞を用いた治療は、まだ有効性の確認が未確立であるため、施術後の予想が困難なケースもありますし、全ての患者さまに効果がでるわけではありません。

患者さまにはまず、標準的な治療をおこなうことをお勧めしますが、なんらかの事情により標準的な治療をおこなうことができない場合や、併用することで標準的な治療の効果が増強することが期待できる場合に検討できる治療です。一方、他の治療方法が妥当と考えられる場合には、この再生医療以外の治療の方法をお勧め致します。

この治療の効果と限界

上記でご説明したような、人の細胞を使っておこなう医療を、現在日本では「再生医療(等)」と位置付けています。再生医療はまだ新しい領域であるため、どのような治療をおこなうのか、その詳細を国に届け出ることになっています。このことは、新しい医療である再生医療をこの国で安全に進めていくために「再生医療等安全性確保法」という法律で定められています。

この自己脂肪由来幹細胞を投与する方法も、国への届け出が済んでおり、治療の全行程は、法に則った安全性を確保してあります。

肝障害とは、肝臓がなんらかの障害を受けた状態を指します。
肝炎・肝硬変・肝不全といったより重症で治療が必要な状態はもちろんですが、健康診断などでALT・AST・γ-GTPなどの血液での肝機能検査が異常値を示す場合も含みます。肝障害の原因は、肥満、アルコールの他、ウイルス、薬物、自己免疫疾患など多岐にわたります。

肝障害は、現在は肝機能検査が逸脱しただけに過ぎなくても、将来的には肝炎や肝がんといった重篤な疾病へ進行することがあります。しかし、肝臓自体が障害されていてもなかなか自覚症状をもたらさない(いわゆる「沈黙の臓器」)こと、また、初期の対応がアルコール、食事の制限や禁煙、肥満への対策などといった生活習慣の改善を求められることから、検査数値の異常が分かった段階での対応は遅れがちです。肝障害は、進行するほど治療が難しくなります。

本治療は、脂肪組織由来の間葉系幹細胞が持つ「体の中で損傷した部分を補修」する力に注目し、肝障害に対する治療をおこないます。

2-1ヒト自己脂肪組織由来間葉系幹細胞投与による肝障害の治療

提供する幹細胞治療の安全性について

間葉系幹細胞(MSC; mesenchymal stromal stem cell)は、骨芽細胞、脂肪細胞、筋細胞、軟骨細胞など間葉系に属する細胞への分化能を持つとされる細胞で、特に本研究で用いる「脂肪由来間葉系幹細胞(AT-MSC)」は、脂肪組織特有の組織前駆細胞として、脂肪組織の成長、ターンオーバーや傷害に伴う組織修復を担う特性があり、幅広い疾患への応用が期待される。また、①組織の採取あ比較的用意で②多様な分化能を有し、③採取組織中のAT-MSCの割合が高く、④大量培養が可能であると言った点も、臨床応用における大きなメリットと考えられている。

AT—MSCを用いた様々な臨床応用は既に多く試みられており、最近では金沢大学で肝硬変患者4名を対象とした脂肪由来間葉系幹細胞投与の臨床研究を実施している1)。ここでは重篤な副作用は認められず、投与後の患者の肝再生に関連する因子(肝細胞増殖因子およびIL-6)は有意に上昇し、血清アルブミン濃度は治療後1年のフォローアップにおいて維持または改善が確認されている。
また、変形性膝関節症の患者12名を対象とした第Ⅰ•Ⅱ相臨床試験2)において、後遺障害を認めない軽微な有害事象は見られたもののその有効性が確認されている。

他にも骨欠損修復促進3)、クローン病に伴う直腸膀胱瘻などの治療における血管新生促進4)、脂肪組織増大治療(豊胸や乳がん再建、顔面脂肪萎縮症などの治療)5-7)、また心筋梗塞に対する細胞投与治療(オランダ)や多発性硬化症への静脈内投与(米国)等、世界で多数の臨床応用がなされている。

特に肝機能に関しては、AT-MSCは損傷部位に集中して組織修復作用を有する特性がある。近年、動物を用いたMSCの研究が盛んに行われており8,9)、肝臓に障害を与えたマウスにヒトAT-MSCを投与した場合、マウスの生存率を上昇させる作用10,12)や、肝障害を回復させる働き11)、肝臓を再生させる効果がある10)と報告されていることから、AT-MSCは肝疾患治癒能力を持つことが示唆されている。未分化なAT—MSCは、in vitroでは肝臓特異的な機能を示すものではないが、この細胞には顕著に肝障害を回復される能力があることが示唆されており11)、その回復度や病理組織学的な障害の抑制度は、分化した肝機能を持つ細胞の移植群に比較して劣ることは無かったと報告されている。こうした未分化なAT-MSCの持つ肝疾患治癒能力は、細胞が産生する様々な種類のサイトカイン、ケモカインなどの成長因子による作用も含まれると考えられ、特にAT-MSCは肝細胞の増殖に働くVEGF、HGF、FGFなどの因子をはじめ、IL-1RアンタゴニストやIL-10など抗炎症性サイトカイン類の産生も豊富であることから、炎症細胞の集積を抑制する機序と肝障害回復の作用が働いていると考えられる12)。

  • (1) Y Sakai, M Takamura, A Seki, et al. Phase I clinical study of liver regenerative therapy for cirrhosis by intrahepatic arterial infusion of freshly isolated autologous adipose tissue-derived stromal/stem(regenerative) cell. Regenerative Therapy. 2017; 6,5
  • 2-64
  • (2) Chris Hyunchul Jo et al., Intra-articular injection of mesenchymal stem cells for the treatment of osteoarthritis of the knee: a proof-of-concept clinical trial. (Stem Cells, 32:1254-1266, 2014
  • (3) Lendeckel S, Jöicke A, Christophis P, et al. Autologous stem cells (adipose) and fibrin glue used to treat widespread traumatic calvarial defects: casereport. J Craniomaxillofac Surg 2004; 32: 370.
  • (4) Garcí-Olmo D, Garcí-Arranz M, Herreros D, et al. A phase I clinical trial of the treatment of Crohn’s fistula by adipose mesenchymal stem cell transplantation. Dis Colon Rectum 2005; 48: 1416.
  • (5) Yoshimura K, Sato K, Aoi N, et al. Cell-assistedlipotransfer (CAL) for cosmetic breast augmentationsupportiveuse of adipose-derived stem/stromal cells-. Aesthetic Plast Surg 2008; 32: 48.
  • (6) Yoshimura K, Sato K, Aoi N, et al. Cell-assistedlipotransfer for facial lipoatrophy: efficacy of clinical use of adipose-derived stem cells. Dermatol Surg 2008; 34: 1178.
  • (7) Yoshimura K, Asano Y, Aoi N, et al. Progenitor-enriched adipose tissue transplantation as rescue forbreast implant complications. Breast J, in press.
  • (8)Liu WH, Song FQ, Ren LN, Guo WQ, Wang T, Feng YX,Tang LJ, Li K. (2015) The multiple functional rolesof mesenchymal stem cells in participating in treating liver diseases. Journal of Cellular And MolecularMedicine. 19: 511-520.
  • (9)Bateman ME, Strong AL, Gimble JM, Bunnell BA. (2018) Concise review: using fat to fight disease: a systematic review of nonhomologous adipose-derived stromal/stem cell therapies. Stem Cells. [Epub ahead ofprint]
  • (10)Chen G, Jin Y, Shi X, Qiu Y, Zhang Y, Cheng, M.,Wang, X, Chen C, Wu Y, Jiang F, Li L, Zhou H, Fu Q,Liu X. (2015) Adipose derived stem cell-based treatment for acute liver failure. Stem Cell Research & Therapy. 6, 40.
  • (11) Banas A, Teratani T, et al. In vivo therapeuticpotential of human Adipose Tissue Mesenchymal Stem Cells (AT-MSCs) after transplantation into mice withliver injury. Stem Cells. 2008; 26: 2705-2712.
  • (12) Parekkadan B, van Poll D, Suganuma K, Carter EA,Berthiaume F, Tilles AW, Yarmush ML. Mesenchymal stem cell-derived molecules reverse fulminant hepaticfailure. PLoS ONE. 2007; 2: e941.

幹細胞治療の可能性

このように幹細胞には病気や古い細胞を新しい細胞に置き換えるという性質があるため、様々な治療への応用が考えられます。幹細胞そのもの、あるいは幹細胞からできた新しい細胞を投与して患者様を治すという考えです。例えば、既に前述した臨床研究以外にもほぼ実用化の段階にきている方法として、心筋梗塞の患者様に幹細胞あるいは幹細胞から作製した心筋細胞を移植してダメージのおこった心臓を修復する治療や、目の表面の幹細胞が極端に少なくなることで目の表面が濁った組織で覆われてしまい失明に至る疾患に対して、目の表面の幹細胞を補うことでその疾患を治すなどといった治療法があります。これは我々の体にもともとある幹細胞では傷のダメージが大き過ぎて治せない、あるいはその幹細胞自体が疲弊してしまっているためです。この場合は、幹細胞を培養技術で数百から数千万もの数に増幅させて移殖することで体内にあるもともとの幹細胞の仕事を助けてくれるわけです。幹細胞は今我々が抱えている病気の数々(がん、心臓病、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、脳梗塞、脊髄損傷、表皮水疱症、変形性関節症、etc.)に対する治療や、さらには健常な身体に対してさらなる若返りへの可能性も秘めている治療なのです。

治療の方法

この治療では、患者様の腹部(腹部からが不可能な場合には臀部を検討)から皮下脂肪組織を10g~20g採取し、脂肪組織から分離した患者様ご自身の幹細胞を培養します。細胞の培養には約3週間かかり、一定の細胞数まで増やした後、幹細胞を静脈内投与(点滴)でお体に戻します。幹細胞は体内の損傷した部位に集まり、幹細胞自体の働きや幹細胞が放出する多種多様な成分の働きにより、傷ついた組織の修復を促します。このことにより、肝臓の障害を緩和し、QOL(生活の質)の改善をはかります。

  1. 診察と血液検査
    この治療について同意いただけた場合、診察と血液検査、腹部超音波検査や必要に応じてCTやMRIを実施します。ここで、重度の肝硬変(Child-Pugh C)、肝性脳症、重篤な疾患、悪性腫瘍、未治療の活動性の感染症が見つかった場合には、本治療をおこなうことはできません。ご了承ください。
  2. 脂肪組織と末梢血の採取
    診察と検査の結果から治療を実施することが可能となった場合は、ご本人の脂肪組織を採取いたします。採取部位は腹部(もしくは臀部)で、局所麻酔下(1%キシロカインを使用)で数ミリの小切開をおこない、麻酔薬、止血剤、化膿止めなどが入った薬液を脂肪組織内に注入の上、※脂肪吸引をおこないます。採取する脂肪量は10~20gが目安です。
    また、細胞培養に用いる患者さま自身の血漿成分を得る目的で、約40mLの採血をおこないます。
    ※脂肪吸引術:当院の脂肪吸引術はAlma Laser社のLipoLifeと言って、日本1台目の医療機器でレーザーのサポートで従来の方法と比較してより安全に脂肪採取が可能になったものです。また、採取した脂肪組織は生細胞率が96%と非常に高く、純脂肪組織のみを採取することが可能なため、そのまま注入することができるほどです。
  3. 創部の処置と術後の諸注意
    脂肪採取した創部は縫合し、皮下出血、瘢痕形成予防のため、厚手のガーゼで圧迫固定をさせていただきます。ガーゼは翌日の朝まで外さないようにして下さい。入浴は翌日の夜から可能ですが、医療用防水フィルムで保護して、できるだけ創部を濡らさないようにしていただきます。防水フィルムがはがれた場合には、創部に化膿予防のための抗生剤軟膏を塗布した後、予備の防水フィルムを貼り直して下さい。
    基本的には術後1週間後に脂肪採取部位の処置のため来院していただきます。
  4. 投与
    約三週間後、培養・増殖させたご本人の幹細胞を全身へ投与致します。投与は静脈への点滴(約260mL)で30分以上かけておこないます。
  5. 予後検診
    培養幹細胞注入から基本的に1週間、1ヶ月、3ヶ月、半年、1年後に予後検診の目的に御来院いただきます。またその他、適宜ご来院をして頂く場合もあります。定期検診時の検査は血液検査の他、腹部エコーや必要に応じてCTやMRI検査を、提携の画像検査センターを予約の上、受けて頂く場合があります。経過観察中の幹細胞追加投与については、医師とご相談ください。
    なお、組織の採取から投与までは通常3〜4週間ですが、細胞の増え方や患者さまが御来院できる日程によって、投与日を事前に調整することも可能です。

患者様の状態によっては、複数回の細胞注入を必要とする場合もあります。したがって、採取脂肪組織から細胞培養をおこなったときに、良好な細胞が十分量得ることが出来た場合には、複数回の細胞注入がおこなえるように細胞を培養して専用の液体窒素タンクで凍結保存します。反対に十分量の細胞が得られなかった場合は、再度脂肪採取が必要になることをご了承ください。

他の治療法との兼ね合いによっても投与日は変わりますので、医師と十分にご相談された上で、治療日程をご検討ください。

脂肪採取に関連した副作用

こ脂肪組織の採取後は、肥厚性瘢痕(傷跡の盛り上がり)、傷口からの出血、採取部の内出血、内出血後の腹部皮膚の色素沈着、創部の疼痛・腫脹(はれ)などの合併症を引き起こすことがあります。発生した場合には、当院の担当医にご相談ください。ほとんどの場合が追加処置なく軽快しますが、適切に対処いたします。
また、ごく稀に発生しうる重篤な合併症、副作用は、以下のとおりです。万が一このような症状が発生した場合には、当院または連携医療機関で緊急に対処いたします。

  • 術後感染症
  • 出血による貧血
  • 腹筋の損傷
  • 腹膜炎
  • アナフィラキシー反応
    (※急性アレルギー反応による冷汗・吐気・腹痛・呼吸困難・血圧低下・ショック状態など)

2-2脂肪組織由来間葉系幹細胞群を用いた慢性疼痛に対する治療

治療について

慢性疼痛の治療法は対症療法が主であり、手術療法などの根治療法がないのが現状です。
保存療法としましては、内服薬、貼り薬、神経ブロック、髄腔内持続注入など、理学療法(温熱療法、 牽引療法、マッサージ、はり治療)、物理療法(レーザー治療、直線偏光近赤外線治療など)、カウンセリングなどの心理療法が中心となっているだけで、現状の治療法では十分な疼痛緩和が行えて いるとは言えません。このように現行の治療は、疼痛症状の調節と治療による副作用を最小化する ための治療法があるだけで、完治できずに多くの人々が苦しんでおります。
このような慢性疼痛に対して、近年、ご自身の皮下脂肪に含まれる幹細胞を含む細胞集団(脂肪組織由来間葉系幹細胞群:ADRCs; Adipose Derived Regenerative Cells)を用いた細胞治療が行われています。この治療の内容は、特定認定再生医療等委員会で適切な審査を受け、その後、地方厚生局を経由して厚生労働大臣に提出されています。

治療で用いる細胞について

この治療で用いられる細胞は、「脂肪組織由来間葉系幹細胞群:ADRCs」といい、患者様ご自身の皮下脂肪組織の中に含まれている様々な細胞の集団をいいます。
この細胞集団には、1) 血管を新しく作ったり、2) 炎症をコントロールしたり、3) 傷ついた組織を修復したりする働きがあることが、これまでの多くの研究の結果で確認されています。美容外科などで用いられている方法で皮下脂肪を吸引し、吸引した脂肪は遠心分離器の中で酵素と呼ばれる試薬の働きにより細胞を切り離して、皮下脂肪の中にある細胞を採り出します。当院では特に最新式のレーザーを使用した脂肪吸引採取機器(LipoLifeTM) を使用することで飛躍的に生きた脂肪細胞の採取ができるようになりました。
また、脂肪吸引後のダウンタイム(治療の回復期)も改善され、術後の痛みの程度の軽減化と期間の短縮化が可能となりました。そして、この皮下脂肪には、非常に多くの数の細胞が含まれているため、細胞の数を増やすための培養( ばいよう) という処理が不要で、その日のうちに治療(細胞の投与)を行うことが可能です。
この細胞集団を移植することで、慢性疼痛をコントロールし、症状を緩和することが期待できます。また、あなたご自身の細胞を用いるため、拒絶反応や感染症の心配がなく、安全にご使用いただくことができます。この細胞は、慢性疼痛のほか、乳房などの軟部組織や、虚血状態の手足などに投与される治療や研究が国内外で行われていますが、この細胞の原因による重篤な副作用はこれまで報告されていません。

治療の内容

対象となる方
脂肪由来間葉系幹細胞の投与による治療の対象疾患は臨床的に慢性疼痛と診断された患者が対象です。本治療で対象となる慢性疼痛は3ヵ月以上続く非がん性の痛みであり、侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、心因性疼痛の3 要因に分けられます。
これらの3 要因が複雑に絡み合って症状が現われている者で、基準に当てはまる患者が対象となります。自身の脂肪由来間葉系幹細胞群を採取し、その幹細胞群を末梢静脈内に点滴投与をおこないます。脂肪由来間葉系幹細胞群を末梢静脈内に点滴投与することにより、脂肪由来間葉系幹細胞が持つ ①神経再生能力や ②神経損傷部の修復治癒能力、また ③抗炎症因子の働きにより、慢性疼痛の諸症状緩和を最終的な治療目的と位置付けています。

  • 再生医療等を受ける方の基準
  • 1.長期間にわたり侵害刺激が加わり続ける侵害受容性疼痛を患っており、他の標準治療法で満足のいく疼痛緩和効果が認められなかった方、または、 副作用等の懸念により、標準治療で用いられる薬物による治療を希望しない方
  • 2.初期の神経障害が消失した後に長期間持続する神経障害性疼痛(末梢性・中枢性)の方
  • 3.侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛が混在する混合性慢性疼痛の方
  • 4.痛みの原因となる組織病変が存在しない自発性慢性疼痛の方
  • 5.医師の説明を十分理解できる方
  • 6.20 歳以上、80 歳未満の方
  • 7.脂肪採取に十分耐えられる体力および健康状態を維持されている方
  • 8.本治療に関する同意説明文書を患者に渡し、十分な説明を行い、患者本人の自由意思による同意を文書で得られた方
  • 9.問診、検査等により担当医師が適格性を認めた方
  • 10.触診にて一定量の脂肪吸引が可能な方
  • 禁忌:
  • 1.自家移植以外での使用
  • 2.循環動態の不安定な方への投与
  • 3.敗血症の方からの原料採取、感染部位への投与
  • 4.進行性腫瘍、化学療法、放射線療法、それ以外の癌治療を受けている方及び癌既往患者への投与
  • 5.活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)が正常値の1.8 倍以上の方への投与
  • 6.原料採取前1 時間以内に抗凝固剤を使用している方への投与
  • 治療の方法
  • 1)まずは、カウンセリング・血液検査などを実施させて頂いて、本治療の適応基準に合致することを確認します。(慢性疼痛の治療に関しましては、完全予約制となりますので、日程についてはご都合に添えない場合がございますことを予めご了承下さい。)
  • 2)皮下脂肪の採取
    適切な麻酔のもと、あなた自身のお腹、お尻、両太ももなどから最低100g以上の皮下脂肪(脂肪組織)を、カニューラと呼ばれる細い管を使って吸引し採り出します。吸引する皮下脂肪の量は、移植する細胞数により変わります。この脂肪吸引方法は、これまで美容外科で行われてきた方法と基本的には同じですが、次世代型とも言われるレーザー光線を併用した脂肪吸引で、より高い安全性と質の高い脂肪組織を採取できる吸引方法です。吸引した皮下脂肪を、細胞を分離する装置で処理して細胞を含んだ細胞液(濃縮細胞液)の状態で取り出します。
  • 3)移植方法
    1)で取り出した細胞液を、静脈内へ注入します。(30 分で約5000万個の細胞を投与する速度で点滴を行います。 細胞数に個人差がございますが、点滴の時間は約1 時間程度となります。) 手術時間は脂肪吸引から細胞の投与終了までで約4~5時間を予定しています。また脂肪採取は最初の1~2 時間くらいで終了しますので、脂肪採取手術から3 時間程度はベッド上で安静位をとって頂くことになります。その間に点滴も行います。点滴終了後はそのまま帰宅が可能ですが、患者様の状況に応じて30 分から1 時間ほど安静にして頂きご帰宅となります。
  • ※セルーションの特製としまして、1 つ1 つの症例を完結しなければ次の症例には移れません。 また、1台の機械で複数の症例の同時進行は、原理的には不可能です。ですから、他の患者様との検体の取り違えは起こり得ませんのでご安心下さい。
検査および観察項目
治療前および治療終了後には、以下のスケジュールにしたがい、診察および検査を行います。

来院日 同意取得 治療前 手術日 1週後 1ヵ月後 3ヵ月後 6ヵ月後 1年後
同意取得
細胞投与
診察
血液検査
X線検査
MRI検査
副作用の有無
VAS
  • この治療法で予想される効果と副作用
  • (1)予想される効果
    痛みの緩和が期待できます。
  • (2)予想される副作用
    この治療法によって起きる可能性がある副作用は、以下のことがあげられます。
  • 1)脂肪採取に関連した副作用
    脂肪組織の採取後は、稀に術後感染や、肥厚性瘢痕(傷痕の盛り上がり)、傷口からの出血、採取部位の内出血、内出血後の当該皮膚の色素沈着、創部の疼痛・腫脹(腫れ)などの合併症を引き起こすことがあります。
    発生した場合には、当院の担当医にご相談ください。その程度に応じて対処致します。
    以下は従来の脂肪吸引に起こりうる合併症です。(レーザー併用の次世代型脂肪吸引装置では起こりにくいとされています。)
    ・出血による貧血
    ・腹筋の損傷
    ・腹膜炎
    ・アナフィラキシー反応
    (※急性アレルギー反応による冷汗、吐気、腹痛、呼吸困難、血圧低下、ショックなど)
  • 2)細胞投与に関連した副作用
    幹細胞投与の際、稀に注入部の痛み、腫れ、内出血など、予期せぬ合併症を伴う合があります。 その場合、担当医の判断により投与を中断型は中止し、適切な対応をさせて頂きます。
    投与後にこのような症状が発生した場合には、当院の担当医にご相談ください。その程度に応じて対処致します。また、ごくごく稀に発生しうる重篤な合併症、副作用としては以下の通りです。いずれの場合も、万が一発生した場合には緊急に対処致します。
    ・アナフィラキシー反応
    (※急性アレルギー反応による冷汗、吐気、腹痛、呼吸困難、血圧低下、ショックなど)
    ・肺塞栓
    (※注入した細胞による肺血管の閉塞、症状が重いと呼吸困難を引き起こします。過去に国内で死亡例が報告されています。

他の治療法について

慢性疼痛の治療法は対症療法が主であり、手術療法などの根治療法がないのが現状です。保存療法としましては、内服薬・貼り薬・神経ブロック・髄腔内持続注入など・理学療法(温熱療法、 牽引療法、マッサージ、はり治療)・物理療法(レーザー治療、直線偏光近赤外線治療など)・カウンセリングなどの心理療法などがあります。

脂肪組織由来幹細胞について

皮下脂肪組織は、その体積のほとんどが脂肪細胞ですが、その隙間には血管内皮細胞や血管周皮細胞、マクロファージ、間葉系幹細胞などといった細胞が多く含まれています(Nakayama et al. 2013)。

同じ量の骨髄から採れる細胞の数と比較した場合、皮下脂肪組織には、10 ~ 100 倍もの細胞が含まれることが分かっています(Mitsumori et al. 2014)。

  • この細胞集団には、2 つのおもな働きがあることが研究の結果分かっています(Zhu et al. 2010, Miranville et al. 2004, Feng etal. 2010)。
  • ① 炎症に関連する細胞をコントロールする物質が出され、炎症を調整する働き(抗炎症作用)
  • ② 血管を新たに作る機能を促す働き(血管新生)
  • 移植した細胞がこれらの作用を引き起こすことにより、様々な病気の状態に効果を出しやすいのではないかといわれています。
  • その他の治療報告
  • Comella らは12 名の終末期COPD 患者に対してSVF を静脈投与した。1 名が脂肪吸引に対する内出血の合併症の報告があった。治療後12 ヶ月に渡って死亡例はなく、全員治療に対して前向きであり、92% が2 回目の治療を望んだ。 被検者のうち何人かは在宅酸素の必要頻度が軽減した。今回の治療は重度の肺疾患に対してSVF 治療が副作用なく施行できることを示唆する内容である。SVF の静脈投与は安全で様々な分野において治療の可能性が期待される。(Autologous Stromal Vascular Fraction in the Intravenous Treatment of End-Stage chronic Obstructive Pulmonary Disease: A Phase I Trial of Safety and Tolerability. J ClinMed Res. 2017;9(8):701-708)
  • 動物実験ではあるが、Foubert らは8 匹の熱傷モデルの豚にADRC を静脈内投与したところ、明らかな有害事象は認めずその安全性が確認されたと報告している。(Foubert P et al. Preclinical assessment of safety and efficacy of intravenous delivery of autologous adipose-derived regenerative cells (ADRCs) in the treatment of severe thermal burns using a porcine model.
    Burns. 2018 Sep;44(6):1531-1542)
    また、静脈内投与に関する報告が2 例なされている。Houtgraaf らは10 名の急性心筋梗塞患者に対してADRC を動脈内投与し、投与後6 ヶ月の時点で心機能の改善が認められ、安全性も確認できたと報告している。 (Houtgraaf et al. First Experience in Humans Using Adipose Tissue‒Derived Regenerative Cells in the Treatment of Patients With ST-Segment Elevation Myocardial Infarction. J Am Coll Cardiol. 2012 Jan31;59(5):539-40.)
    また、Sakai らは4 名の肝硬変患者に対してADRC の肝動脈内投与を行ったが重篤な有害事象は確認されなかったと報告している。(Sakai et al. Phase I clinical study of liver regenerative therapy for cirrhosis by intrahepatic arterial infusion of freshly isolated autologous adipose tissue-derived stromal/stem (regenerative) cell. Regen Ther, 2017 Mar 9;6:52-64)
    これらは直接セルーションによって得られた非培養、新鮮ADRC の安全性を示唆するものであり、ADRCs の静脈内投与は安全であると考えられる。
  • 2014_Inoue et al:This paper reports an evaluation of the Celution System performed by Dokkyo University. The authors
    confirmed no bacterial contamination and a superior level of safety could be achieved using the Celution System.
    この論文は、獨協大学が実施したCelution System の評価を報告しており、著者らは細菌汚染がなくCelution System を使用して優れたレベルの安全性を達成できることを確認した。
  • 2013_Aronowitz et al:This paper compares four different devices used in SVF processing, including the Celution System. The authors concluded that the Celution System produced the highest number of viable nucleated cells. Furthermore, it was also demonstrated that variability in cell yield, viability and composition was considerably smaller with the Celution System, compared to the other systems. Residual enzyme levels with the Celution System was also confirmed to be the lowest, which is a key parameter for assuring patient safety.
    この論文は、Celution System など、SVF 処理で使用される4 つの異なるデバイスを比較しており、著者らは、Celution System が最も多くの有核細胞を生産したと結論付けた。さらに、細胞収量、生存率、および組成の変動は、他のシステムと比較して、Celution
    System の方がかなり小さいことも実証された。 Celution System の残留酵素レベルも最低であることが確認された。これは、患者様の安全を確保するための重要なパラメーターである。
  • 2014_Fraser et al:The authors confirmed reliability and reproducibility of the viability, yield and composition of ADRC output from 43 donor tissue samples processed with the Celution System. Results were consistent with other published data for the Celution System.
    著者らは、Celution System で処理された43 のドナー組織サンプルからのADRC の生存率、収量、組成の信頼性と再現性を確認し、結果はとしてCelution System の他の公開データと一致していた。
  • Michalek らは脳梗塞後の患者に対してSVF を静脈投与したところ、経時的に脳梗塞後の麻痺および、それに付随した痛み、めまい、倦怠感の改善が認められた。発症32 週後には完全に発症前の状態に戻った。よって、脳梗塞に対するSVF の静脈投与は安全で効果的な副作用のない治療法である。
    (Stromal Vascular Fraction Cell Therapy for a Stroke Patient-Cure without Side Effects. Brain Sci.2019,9,55,doi:10.3390)Bright らは緊張型頭痛あるいは慢性片頭痛を有する女性4 名に対してSVF の全身投与(静脈注射)を行ったところ治療を行った患者はいずれも優位に偏頭痛の頻度が減少したと報告した。SVF の抗炎症および免疫賦活機能は、硬膜侵害受容ニューロンを活性化および感作する炎症因子をコントロールできることが示唆されている。(Bright R, Bright M, Bright P, Hayne S, Thomas WD. Migraine and tension-type headache treated with stromal vascular fraction: a case series. J Med Case Rep. 2014 Jun 30;8:237. )従来の治療に抵抗性のある慢性疼痛患者に対して間質性幹細胞の中で自己脂肪由来のものを用いることは安全でかつ倫理上の問題がないため使用しやすい。脂肪吸引をして得たSVF の中には脂肪幹細胞が豊富に含まれており、幹細胞は抗炎症性サイトカインや細胞増殖因子を放出し、炎症性サイトカインを抑制する。また、ホーミング効果によって幹細胞は損傷部位に移動して、神経因性疼痛や関節軟骨の再生、外傷部位を修復する。よって糖尿病性末梢神経障害や脊髄損傷にも有用である。また、至適細胞数などはわかっていないが、細胞数依存的に鎮痛効果が得られた。結果、ほとんどのアロディニアやhyperalgesia(痛覚過敏)は減少した。
    (Han YH, Kim KH, Abdi S, Kim TK. Stem cell therapy in pain medicine. Korean J Pain. 2019 Oct 1;32(4):245-255.)

脂肪組織由来幹細胞群の安全性について

今回用いる細胞は、患者さまご自身の脂肪組織から取りだされる細胞のため、アレルギー反応などの心配がありません。また、腰などの骨から採取する骨髄と比較し、皮下脂肪は体への負担が少なく多くの組織を採ることが可能です。さらに皮下脂肪に含まれる細胞数は、同じ量の骨髄に含まれる細胞数と比較しとても多いために、培養をして細胞数を増やす工程は必要なく、それに伴う細胞汚染のリスクが極めて低いと考えられます。
国内では、心不全の患者さまに対する冠動脈への投与(ClinicalTrials.gov ID: NCT01709279)、および肝硬変の患者さまに対する肝動脈への投与(ClinicalTrials.gov ID: NCT01062750) が行われ、いずれにおいても細胞が原因となる重篤な有害事象は報告されていません。また、心筋、尿道周囲、乳房など様々な部位に脂肪組織由来幹細胞群の投与が行われておりますが、これまで重篤な有害事象の報告はありません。
その他、本治療では採取したご自身の細胞を静脈内投与(点滴)しますので、可能性として肺へ向かう血管を詰まらせる肺塞栓と言う病態が起こってしまうリスクがあります。細胞自体は大変小さい細胞群ですが、細胞が塊となってしまうと肺塞栓のリスクが高まりますので、投与する点滴用のチューブには細胞の塊を除外するフィルターを設置します。それを設置することと投与のスピードを厳守することでリスクを極めて低く抑えることが可能です。

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